飛騨の農家を取材してみて【立教大学観光学部 ももね】
飛騨市にインターン生として来ている、立教大学観光学部のももねです!
今回、飛騨市河合町にある政木農園に訪問し、キクラゲが育っているコンテナの中と春菊畑の見学をさせていただきました。政木さんがこれらの食材に対してどのような思いをもっているのか、農業との向き合い方について伺った内容をまとめたので、ぜひご覧ください!
作業風景を見て感じる
政木農園の取材日は、キクラゲのパック詰めをしていました。一つ一つ手作業で丁寧に選別し、傷がついていないかなどの確認をしていました。キクラゲを観察すると、普段食べている大きさの倍以上もあり、肉厚でプリッとしていました。キクラゲは漢字で「木耳」と書きますが、まさに耳のように内側に向かって丸まっています。黒色が一般的ですが、政木農園では白キクラゲも育てており、見た目はお花のように広がっているのが特徴的でした。作業が終わった後には春菊畑を案内してくださり、春菊の様子を見に行きました。春菊の旬は冬ですが、夏でも比較的涼しい飛騨市河合町では夏場でも栽培可能で、春菊が一面に広がっていました。普通の春菊は、畑に行くだけで春菊特有の匂いがするそうですが、その匂いは全く感じられませんでした。政木さんの育てている「サラダ春菊」は、えぐみが少なく、生でも食べやすいように改良された春菊であるため、苦手意識のある人は克服のチャンスかも?
混じりけの無いクリアな飛騨市の水
飛騨市は、広葉樹の落ち葉によってできた腐葉土に染みこんだ雨水や雪が、長い年月をかけてろ過され、山から綺麗な水として流れてくるのが特徴的です。政木さんがキクラゲを洗うときは、河合町に流れる谷の水を使うそうですが、これは「ぎふ清流 GAP 評価制度」という評価の要件を満たしており、純度が高い水であるということがわかります。パッケージにはロゴマークが貼られており、消費者が安心・安全で信頼できる農産物として提供することができます。
農業をする上での苦労
政木さんは「良いものを安く提供する」ことをモットーに、消費者である私たちに喜んでもらうために日々農業に励んでいます。試行錯誤を自由にできる農業だからこそ、作物がうまく育ったときに、やりがいを強く感じることができるそうです。そんな思いに反するように、近年飛騨市でも温暖化が進み、元々軽くてさらさらだった雪(パウダースノー)が重たい雪になり、ビニールハウスが壊れてしまう被害や、夏の異常な暑さによる作物の不作などが問題となっています。実際に政木さんもビニールハウスの倒壊や、春菊の不作による出荷数の減少を経験しています。また、政木さんは冬が旬のほうれん草を夏に栽培し出荷していますが、これも温暖化の影響で作りにくくなっているそう。さらに、農業に必要な資材の値段が上がっていることなどから、ますます農業経営が厳しくなっていることがわかります。
身体が喜ぶ「政木農園のキクラゲ」
キクラゲはコンテナの中で温度と湿度を徹底的に管理された状態で育てられ、温度は22℃、湿度はなんと約 95%を維持しています。そのため、コンテナ内部は霧がかかっているような空間で、ひんやりとしていました。もともとキクラゲは桑の木に自生しており、日本では保存食として食べられていました。しかし、現在の日本で売られている乾燥キクラゲのおよそ 99%は中国からの輸入に頼っており、昨今の残留農薬問題などから、国内産の需要が高まっていると言われています。農薬を使わず、水と温度調節のみで育てられた政木農園のキクラゲは、肉厚でコリコリとした食感が良いだけでなく、身体にも優しいきのこなのです。黒キクラゲのオススメの食べ方は、卵と一緒に炒めるのが定番ですが、生キクラゲは茹でて氷水などで冷やし、お刺身のようにわさび醤油で食べるのもおいしいです。白キクラゲは、黒蜜ときな粉を使ったスイーツとして食べるのがオススメだそう。黒キクラゲよりもゼラチン質であるため、茹でるとまるでわらび餅のような、ぷるぷるとした食感に変わります。「キクラゲがスイーツ?」と半信半疑に思う人はぜひ試してみてください!
「サラダ春菊」はそもそもなぜ生まれたの?
現代では料理をする人が減り、手軽に食べられるものは何かを考えたときに、サラダなら簡単に食べられると思い、生で食べることができ、えぐみのない春菊を作り始めたそうです。政木農園の春菊は農薬が使用しておらず、飛騨のおいしい水・空気と、寒暖差により育てられた春菊は、葉が柔らかく軸まで食べられるので、捨てるところ無しでフードロス削減にも貢献しています。オススメの食べ方は、サラダとして食べるのはもちろん、キクラゲと合わせたナムルもイチオシです。また、天ぷらにしてサクッとした食感の中に広がる春菊の豊かな風味を味わうのも良いかもしれませんね。
実際に取材してみて感じること
おいしい食材は、整った環境と生産者の愛情・消費者に対する思いからできていることを、取材を通して痛感しました。現代の私たちは、食材を「買う」という行為を通して手に入れている人がほとんどであると思います。しかし、食材を購入できるのは生産者がいるからであり、買うという手段でしか食材を手に入れられない人達は、生活が苦しくなる未来が来るかもしれません。そこで、生産者の人との関わりを持つこと、自分自身が農業へ関心を持ち、自ら生産者側になれるように知識を得ることが重要であり、実際に農業をしている人たちの話を聞いたり、体験したりすることによって、食への考え方や価値観を広める必要があると思います。皆さんも、まずは農業を知ることから始めてみませんか?