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農業の楽しさ

池田農園池田俊也

飛騨はトマト農家が多く、その中でも多くの農家さんが、冬は別の仕事をされたり、別の作物を作ったり、畑の土づくりをしたりして過ごします。池田さんが冬につくるのは、イチゴ。「実はイチゴについては、栽培というより、イチゴ狩りをしたかったんです。農業の生み出す価値は、『おいしい』。しかし、そこに加えて『楽しい』の価値も見出したいと思って始めました。イチゴ狩りより先にミニトマト狩りを始め、喜んでもらえる手ごたえを感じ、今は冬場にイチゴ狩りを楽しんでもらっています。」

与えすぎず、足らなさすぎず。“特別に何かをする”栽培ではなく、その時に作物が求めていることだけをする、というシンプルな考えで、野菜にストレスを与えることなく育てている池田さん。農業のやりがいを聞いてみると、「やりがいはね、たくさんあるよ。農業はやった分だけ結果になりますからね。手をかければかけるほど、成果になりますよ。」

「農業をやっていて、嬉しいと思った瞬間を教えてください。」という質問に、池田さんはハウスの方を見つめて、「トマトと会話ができた瞬間かな」と教えてくれました。「トマトがこういうことを求めているなということをやってあげて、それが成果になるとすごく嬉しいです。『成果』って、果実が成るって書くけれど、その通り、実がたくさんできたり、おいしくなったり。」「へええ。トマトの求めていることが分かるんですか。」「いやぁ、分かんないことも多いですよ。1か月後くらいに『実は私、1か月前にああしてほしかったんです。』って作物が言うんです。遅いよって。」毎日毎日会話をしながら、時には、少し遅めの要望をトマトから聞いて、池田さんは農業を続けているのだそうです。

「さっきイチゴの話のときに、『楽しい価値を見出したい』という話をしたんですけど、『楽しいが農村を救う』って思うんですよね。そのために、スタッフたちも楽しく無理のない範囲で仕事してもらっています。」人にも作物にも無理なく、「楽しい」を生み出す農業。それは農業の「おいしい」以外の新たな広がりを作り出します。まるごと食堂で「おいしい」を経験したお客さんが、次は「楽しい」農業を経験できるように、池田農園はきっとこの冬も忙しいはずです。

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