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土づくりからこだわったトマト

吉本農園吉本理沙さん

吉本農園のハウスには、トマトの苗がびっしり。トマトに特化した農業を行っています。4月から6月末まで時期をずらして種を(苗を?)植えているため、7月から11月末が収穫期間。トマトを長い期間採れるように工夫しています。
「その特色を生かすために、トマトジュースを作っているんですよ。」と話してくださったのは、笑顔の素敵な吉本さん。「メリットをそのままジュースにしました。夏、秋、冬の最後のトマト。夏はとても赤いジュースで、冬はニンジンみたいな色のジュースができるんです。植える時期、採れる時期が違うだけで甘味やコクも変わってくるんですよね。とても面白いなって思いながらトマトを作っています。」



また、吉本農園はトマト農家になりたい方を教える研修所を、農協から任されて運営しています。研修所で学んだ方が、飛騨で独立をしているそうです。
「トマトを作る上でこだわりはありますか?」と聞くと、「秋、片づけのときの土づくりですね。春ではなくて、雪に埋まる前の冬に行うんです。雪の降る前にたい肥や、微生物資材の散布を行います。また、麦を植えて、麦畑を作っておくと、冬の間に土が固くなるのを防げて、自然の力で耕すことができます。また、トマトを収穫した後の苗を細かくして土に混ぜます。これは、冬の間に栄養分になるんですよ。土壌診断も毎年行っています。」



繁忙期には毎日トラック2杯分ものトマトが採れるそうで、20人ほどで作業を行います。取材中も、農家スタッフの楽しそうな声が聞こえてきました。「女の人が多く、子育ての経験を生かして手伝ってくださいます。子どもを見るように、葉っぱの様子をよく観察して、『これ、病気じゃないかな』とよく気付いてくれたり、トマトを丁寧に扱ってくれたり。わが子と向き合うように、トマト一つひとつと丁寧に向き合う。そんな優しい母のまなざしが見えてきます。

今回見せていただいたのは河合村のハウス。雪の深い地域で農業をすることは、トマトとの関わりでもあり、雪との関わりでもあります。「そういう厳しい環境ですが、だからこそ、雪解け水を使って農業ができます。寒暖差があるから、このトマトのおいしさが出来上がるのかなぁ。」ゆっくりと畑にしゃがみ込むと、苗からトマトのみずみずしい香りがふわっと香りました。